祝祷の言葉について

祝祷の言葉について

石井智恵美

 毎回、礼拝の最後に行っている祝祷の言葉について、ご質問があったのでお答えしようと思います。
「サラとアブラハムの神の祝福と、マリアより生まれ給いし主イエス・キリストの愛と、母のごとくわれらを育くむ聖霊の助けとが、ここに集った一同と共に、また同時代を生きるすべての人々と共に、今も、いつも、豊かにありますように。アーメン」
 これは、母教会の戸手教会でご一緒した故・荒井俊次牧師より伝えられた祝祷です。CCA(アジアキリスト教協議会)やWCC(世界教会協議会)などで長くエキュメニカル(超教派)運動にかかわった荒井牧師が、WCCの礼拝で使われていた祝祷を伝えてくれたのでした。「父と子と聖霊の御名によって」という祝祷がキリスト教会では一般的ですが、神は父なのか、という問題提起が1960年代にフェミニスト神学より出され、神は性別を超えた存在であること、また女性性、男性性を併せ持ち、父性と共に母性を持つ存在であること、などが、エキュメニカル運動の中でも確認されてきました。そして、この祝祷ではサラとアブラハム(旧約時代)、母マリアと子イエス(新約時代)という女性と男性の共同の業によって、この世界が祝福され、命の創造的な活動がなされていることが表現されています。そして最後に、目に見えないけれど育て助ける聖霊(教会の時から現代まで)の母性的な働きが述べられています。「同時代に生きるすべての人々と共に」はコロナ禍の時に追加した文言です。神の祝福は、すべての人に及んでいることを特に伝えたかったからです。全体として神と人の女性性・男性性の調和と協力による祝福と愛と助けが述べられている祝祷となっています。